できない研究者が論文生産術を身に着けるには

研究者生活

去年の11月にアカデミアに戻ることを決心したのだけれども、その後
「私、本当に論文をバリバリ書いていけるのだろうか!?」と心配でしょうがなくなってしまった。

出戻ることになった経緯はこちら↓

私、論文を書くのはとてもとても遅い方。
M2の頃に書いた初めての論文はなんだかんだで1年くらいかかったし、
卒業後に書こうとしていた2報目の論文は書いてはやめ、の繰り返しで7年間塩漬けのまま。
ということで、読んだ本が、これ。(夫が持ってた)

できる研究者の論文生産術 ポール.J・シルヴィア 著

書いてあったことはこんな感じ。

①書かない言い訳をするな
②とにかく書け、直すのは後から
③習慣づけろ、毎日書け
④目標を設定しろ
⑤サポートグループを作れ

もうど正論でぐうの音も出ない。。。
アカデミック界隈の人々にはぜひおすすめしたい一冊。
いや、みんなこんなの読まなくても論文を書くのが早いのかなぁ…

これまで私がやっていた書き方は、これと真逆で
「がっつり空いている時間にまとめて書く」スタイル。
ところが年々忙しくなるし、そもそもそんなに長い間集中力が持たないので効率悪い。
卒業後も、なんとか土日に論文を書く時間を取ろうとしていたけれど
毎週土日にそんなにまとまった時間取れるわけがないし。
時間が取れたとしても(前から1,2週間以上たっているので)
「あれ?この前どこまで進めたんだっけ?」と思い出すのに時間がかかったり…
そんなことしているうちに面倒くさくなって2報目は塩漬けにされていった。

①~③はこれから気を付けていこうと思ったけど、
④はそもそも自分の作業量が見積もれないので難しいな、と思った。
ということで、自分の作業量を見積もる・論文執筆を習慣づけるために記録を取ってみた。
本にも、進行状況を記録してみると良いと書いてあったので。
その記録結果が割とたまってきたので、ここで振り返ってみようと思う。

記録の概要

記録期間
2020/11/8~2021/5/23

記録したこと

  • 日付取り組み開始・終了時間
  • 取り組み内容メモ
  • 進捗(何word書いたか)
  • 自己評価(0~5)

自己評価は2020年末から記録し始めた。
というのも、考察や文献探しの作業が多く、
執筆した文字数だけでは進捗度合いを判断できないなと感じたので。
論文の文章を書くだけでなく、参考文献探しや読み込み、
図の作成、カバーレターなど論文に関わる(実験以外の)すべての作業を「執筆作業」とみなした。

主に書いていた論文
主に書いていたのは、例の7年間塩漬けになっていた2報目の論文。
データは修士の頃+卒業後1-2年でだいたい測定し終わり、実験項もおおよそ書き終わっていた。
11月からはじめたのは考察とイントロと細かい図の修正、Supporting Information作りなど。
文字数としては大したことないが手間がかかるところばっかり残っていた…
この論文は4月末になんとかsubmitできたので、
その後は次の3報目の論文の準備作業をやりつつ、2報目の論文のリバイス返したりという感じだった。

マイルール
夜、家に帰ってから…は絶対無理だと自信があったので、
朝早めに起きてやることにした(目標1時間)。
11-12月(2020年)はまだ会社勤めだったので出勤前、
1月(2021年)は有休消化中だったので割と好きな時間にやっていた。
2月以降は、基本は朝出勤前に家でやっていたけれど
急いでやる作業がある場合は昼間・夕方に大学でやることもあった。
大学で作業していた時の記録は、バタバタしていたのであまり正確に記録できていない。

記録結果

全期間通しての平均はこんな感じ。

取り組み時間
[min]
進捗
[words]
自己評価
(0~5)
サボった日
[%]
2020年11月88.89
2020年12月64.06
2021年1月96.4142.616.1
2021年2月90.742.0021.4
2021年3月79.3132.766.1
2021年4月58.282.4720.0
2021年5月61.302.0421.7
全期間平均77.682.4114.3
※5月は5/23までの記録
いろいろ気づいたこと

やっぱり書くのが遅い
8 words/day!!!おそっ!!!
4月にsubmitした論文は、結局本文だけでだいたい3000wordsあったので
このペースだと1報書くのに375日かかることになる。さすがに遅すぎ。
一日に8wordしか書いていない、というのではなく、
実際は何も書けない日が大半で、数十words書ける日がちらほら、という感じ。

ちなみにこの本の筆者の場合は、平均789words/dayだそう。
ネイティブ・非ネイティブの差こそあるものの、それにしても雲泥の差…

この期間は、実験項のようにあまりサクサクかけるようなパートは含まれていなかったので
言い訳しておくとすると、長期間記録を取ればもう少しマシになるかも…?

意外とサボってる日が多い
一応、毎朝やるようにしていたつもりが、計算してみるとサボった日率が14.3%。
意外と多い。振り返りって大事だな。
確かについつい土日くらいいいだろうと週一くらいでサボってる気がするので
ここは改善ポイント。6月からはサボった日率一桁を目指そう。

ちなみに、サボらなかった日の自己評価の分布をみるとそれなりにやっている
(3を中心としてそれなりに分布している)ようなので(あくまで自己評価)、
サボる日をいかに少なくするかは大事なような気がする。

月ごとの自己評価の分布。評価0は「サボった日」。

「いつやるか」は意外と関係ない
時間帯ごとの自己評価の平均を出してみた。

時間帯 割合 
[%]
平均取り組み時間
[min]
自己評価平均
(0~5)

(~11:00まで)
68.282.22.83

(11:00~17:00)
20.5118.32.87

(17:00以降)
11.469.22.42

なんとなく、「朝の方が集中できる」みたいなイメージがあったので、これは意外だった。
朝は寝ぼけながらやっているのでエンジンかかるのに時間がかかるのと、
出勤時間が決まっている朝と違って、昼だと終わりの時間が特に決まっていないので
やりたいところまでキリ良く終わらせられるからかもしれない。
(サンプル数が偏っているので結論付けるのはちょっと早すぎるけれど)
朝以外に習慣づけられる時間帯があるのなら変えても良いのかもしれないと思った。
(でも結局朝じゃないと毎日決まった時間は取れない気がする…)

習慣づけはやっぱり大事
朝、予定通り論文執筆の作業をすると
「今日も(一応)論文を進めた」と思えて気持ちがいい。笑
あと、毎日眺めているとさすがに内容を忘れにくくなるので
以前のように「前回どこまでやったっけ?」と時間をロスすることは少なくなったように思う。
また、やる気がなくてもとりあえず書きかけの論文ファイルを開く時間を作ると
それなりにエンジンがかかってきて進むこともある(そのままエンジン不発で終わることもある…)

また、論文を「書く」だけでなく、参考文献を読んだり探したりするのにも時間がかかるので
意図的に毎日時間を取るとそういう下準備が進めやすくなると感じた。
ついつい実験データが出そろってから文献探し・読み込みを始めがちだけれど
それってデータが出そろう前にできる作業なので、先行して進めておいた方が効率が良い。

記録をとった成果(?)かどうかは置いておいて、
7年間塩漬けにしていた論文は無事5月にacceptされました。めでたしめでたし。

今後の課題
ひとまずは、論文執筆作業を習慣づけることができたのはここ半年の進歩。
作業量はいまだに見積もれない気がする。ので、記録はこれからも続けていこうと思う。
これから書こうと思っている論文(3報目)は、ゼロから書くことになるので
3報目の論文が出来上がるまでの記録をとれれば、作業量見積り・目標立てできるようになるかも。
書くのが遅いので、一日60分と言わずもう少し時間を確保できれば良いけれど、、、
すでに朝5時起きなのでこれ以上朝時間を確保するのは難しい。
やるなら朝の部に加えて夜の部を確保するか?それもなかなか難しい…

他には、論文の進み具合を客観的に評価する指標って他にないのかなと思った。
今回「書いた文字数」はなかなかあてにならないなと感じたし、
取り組んだ時間が長くてもダラダラしている場合もあるので。
とりあえず自己評価で5段階評価してるけど、他に何か指標がないものだろうか、と悩み中。
作業量がだいたい分かってその日ごとの目標が明確に立てられるようになれば解決するのかな。

ちなみに、⑤「サポートグループを作る」ってのも、やってみたいなとは思っている。
仲間を集めて、週一とかで論文の進捗がどうかを話したり励ましあったりするらしい。
要するに、自分を追い立てるためのグループ。
仲間になってくれる人募集中。笑

その他感想

記録結果をひたすらExcelで解析していたけれど、
ちょうど今Pythonの勉強をしていたから、練習がてらそちらで分析してみればよかった、と思った。

その後どうなったか

引き続き記録しながら論文を書き進めていくと、少しは書けるようになった気がする。
その時の振り返りはこちらに書いている。

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